競走馬主要血統表 および評価
1-2 種牡馬考察
実名はその種牡馬
(■)は父系統、数字は()の馬の系統根幹からの世代数
数字が小さいほど種牡馬への影響力が強い
おおまかに募集馬順に並べていますが
今後募集が少なくなりそうな馬や亡くなった馬は後ろに下げています。
(目次・順不同) 社台系・キャロットに関連する種牡馬中心 サンデーサイレンス系統 ⇒ディープインパクト ⇒ディープブリランテ ⇒トーセンホマレボシ ⇒ステイゴールド ⇒オルフェーヴル ⇒ネオユニヴァース ⇒ヴィクトワールピサ ⇒ハーツクライ ⇒ジャスタウェイ ⇒マンハッタンカフェ ⇒ダイワメジャー ⇒ゼンノロブロイ ⇒ゴールドアリュール ⇒スペシャルウィーク ⇒(フジキセキ) ⇒ダノンシャンティ ⇒キンシャサノキセキ Kingmambo系統 ⇒キングカメハメハ ⇒ルーラーシップ ⇒ロードカナロア ⇒ワークフォース ⇒(キングスベスト)⇒エイシンフラッシュ Northern Dancer仔系統 ⇒(デインヒル)⇒(Dansili)⇒ハービンジャー ⇒(Storm Cat)⇒へニーヒューズ ⇒(フレンチデピュティ)⇒クロフネ ⇒(Night Shift)⇒タートルボウル Roberto系統 ⇒シンボリクリスエス ⇒(グラスワンダー)⇒スクリーンヒーロー Phalaris系統以外 ⇒(Blandford)⇒(Monsun)⇒ノヴェリスト |
ディープインパクト
中長距離のレースを勝っているが、一番パフォーマンスが高かったのは春の天皇賞であると言える。出遅れたのも気にせず涼しい顔でロングスパート、上がり33秒5でレコードを叩き出した圧巻のレース振りからこの馬の真髄はステイヤーであったと言えるのではないか。母父アルザオはリファール系で、ダンシングブレーヴよりも早熟で軽めの活躍馬を出した。母母父のバステッドはブランドフォード系で零細系のスタミナ血統である。ウインドインハーヘア自身はスタミナよりに出て、そこにサンデーのスピード系がうまく乗ったのがディープインパクトだろう。母父アルザオの持つノーザンダンサーへのクロスがつながるとよりスピードが生きる。つーことでノーザンテースト系やダンチヒ系と相性がいいのだろう。ただ、母父アルザオの血なのか大舞台に強いのは牝馬よりになる傾向がある。ここだけ注意。 <血統評価2015> サンデーサイレンスの父はスピード系かつ中長距離を得意とするTurn-to系のHalo、Hail to ReasonとPharamond系で構成されPhalarisが強調された近親配合である。母系はPhalarisの祖Bend Orから分枝しPhalarisに良く似た異系Teddy系、それにEclipsから分枝した異系Hyperionで構成されている。サンデーサイレンスは母Wishing Wellの血により遺伝の活力を得た、という。Teddyは凱旋門賞馬を出すなどスピードの遺伝もあるが、その血の本質はアメリカ競馬界にもたらしたパワーの遺伝にある。Hyperionはスタミナを遺伝させると考えられる。スピード系の基盤にパワー、スタミナが加わってサンデーサイレンスの血が構成されている。 ディープインパクトの母はPhalaris系の血3本に、その祖Birdcatcherから分枝したスタミナ活性の異系Blandford系が1本加わっている。父の系統はNorthern Dancer系のLyphardで、しなやかで柔軟性を持つNorthern Dancer系の中でも特に瞬発力が良く、早熟性も持たせる。Sir Gayload系はTurn-to系からの分枝血統でスピードの活性を支持し、Fairway系はPhalaris系ではあるが、あまり主張しない血統である。Blandford系は英国ゆかりの長距離血統で、スタミナとともに従順で大人しい気性が特徴である。ディープインパクトの血でBlandford系は大事な役割を果たしている。Phalaris系のスピードないしNorthern D.系の瞬発力を長距離のレースで生かしきる=我慢する、騎手の指示に従うためには気性の良さ、賢さが必須だからである。 母父としては小柄で筋肉量が少ないという遺伝特性が致命的な気がする。母父ディープインパクトで大成するためには父側で頑健さを強化しなくてはならない。
<クロス因子> ■Gulf Stream(■ディープ/5、サンデー/4)=Hyperion/1+Drift/2 ↓…3/4…↑ ■Heliopolis=Hyp/1+Dr/1 ▲Burghclere(■ディープ/2)=Busted/1+Highclere/1 ↓…3/4…↑ ▲Height of Fashion(■Nashwan/1、■Unfuwain/1)=Bst/2+Hc/1 ▲Hypericum(■ディープ/5)=Hyperion/1+Feola/1 ↓…3/4…↑ ■Aureole=Hyp/1+Feola/2 |
ハーツクライ
<血統評価2015> サンデーサイレンスはディープインパクトの項参照。3代前にPhalaris系2、パワーの異系1、スタミナの異系1。母の父はNasrullah系の中では気性の良いゼダーン系のトニービンで、頑強さ、重馬場適性とトップスピードの高さを遺伝させる。不器用で加速に時間を要するため騎手の上手さや競馬場の造りに成績が左右されることになる。ここで相手の系統にLyphardが入っているのはとても良く、瞬発力の不足を補っている。ほかの2本、Hyperion系はEclipseから分枝したTouchstoneを祖とするスタミナ系の異系である。このクロスが入りさらに重厚でスタミナを強調されている。Himyar系もTouchstoneからの分枝だがなぜかこちらはパワー重視でダートに強い特性を持つ。芝馬の場合は体を固くしてしまい、瞬発力を削いでしまうだろう。長距離が得意にはなるだろうが慢性的なスピード不足、決め手不足は否めず、現代競馬を走るにはとにかくこの血を軽くする必要があるだろう。
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ダイワメジャー
血統構成の似た馬が数多く生産されたが、期待された中距離の活躍馬はほとんどなくクラシックを獲ったのはこの母系だけとなっている。柔軟性に富むNorthern Dancer系でも特に和合性の高いノーザンテーストだが、一番期待されていたはずのサンデーサイレンスとの相性はイマイチだった。それはTeddy系というアメリカ・ダート血統のクロスによる柔軟性の減退と短距離、パワー特化のせいではないかと考えられる。それを逆手にとりTeddy系のクロスを増やしてパワー型をつきつめた結果がこの気性難の暴れん坊を産み出し、その過程で多くの失敗作を出したのであろう。Himyar系もTeddy系を強調してパワーを付与している。気性難、筋肉の性質と相まってその活躍は短距離までに絞られる。ヘタに異系血統を導入するよりは、Phalaris系のスピード血統を強めて特化型にしたほうが活躍の可能性は高まる。が、さすがにパワーの系統はもう入れないほうがいいのではないか。 <母系追記> 母母のスカーレットインク牝系からは当馬のほかにダイワスカーレット、ヴァーミリアンと2頭のG1馬を始めとして幾多の重賞馬が出ている。スカーレットインクの父父Spy Songはアメリカダート血統のHimyar系Peter Pan血統で、加えてSpy Song自身にPeter Pan3×3の濃いクロスを持つ。このSpy Songが強烈なパワー属性を子孫に与えていると考える。スカーレットインクの母父はBeau MaxでこれまたTeddy系の本流Bull Leaの血統である。母母はRoyal Chargerの系統で、中長距離向きのスタミナと鋭いスピードの因子を持ちこの因子の強調によって距離適性に若干の幅が出る。(Royal Chargerの母Sun PrincessはNasrulahの半姉である。また、Sun Princessのひ孫で種牡馬として成功したMarmoudと3/4同じ配合でRoyal Charger自身のクロスというよりはこれらの近親系統に刺激を受けやすいようだ。)3代母のYour HostessはYour Hostの全妹でYour Hostは(wikipediaの逸話によれば)生命の危機を2度も乗り越えたアメリカの名馬である。社台グループ創始者の吉田善哉氏が名馬Your Hostの血統を欲しいと熱望し2戦未勝利のスカーレットインクをアメリカから買い付けたと言われている。母スカーレットインクはパワーの因子が強いアメリカン血統だと推測される。Royal Charger、Nearco系の強調がたまたま上手く嵌ったダイワメジャー&ダイワスカーレット兄妹が名を残しているが、芝の瞬発力勝負ではヨーロピアン血統に劣るのは血統的には仕方ないか。ダイワメジャー産駒のどっしりとした腰回りや肉付きにBull LeaやSpy Songの面影を見て取れる。
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ゼンノロブロイ
母の主軸となるMr.Prospectorはアメリカを中心に世界中で流行している血統で、その血の構成はNative D. × Nasrullah (=Nearco) でPhalarisの血を濃縮した配合になっている。この配合は欧州を中心に流行っているNorthern Dancerの配合Nearco×Native D.と父母逆の同構成であることに驚く。どちらも小さな見栄えのしない馬体だったものの能力の遺伝は素晴らしく、インブリードによってPhalarisを人為的に蘇らせたと考えてもいいのではないか。Northern D.系とMr. Prospector系の世界的流行は実は約束されていたものだったのかもしれない。Northern D.系との違いは、Northern Dancerの母母がBlandford系、Matchem系という奥ゆかしい零細血統で構成されていたのに対し、Mr. ProspectorはTeddy系のクロスを持ち筋肉量が豊富でアメリカ・ダート向きのパワーが強調されていた点である。早熟さとスピード(派手さ)、さらに筋肉質の見栄えとアメリカ人の好みにピタリと当てはまり、アメリカの繁栄(というよりもヨーロッパの衰退)によってその血が世界に広がっていった。Mr. Prospector系は類NearcoのTom Fool系と和合性が高く、ニックスを形成する。 母系は主軸を含めてPhalaris系3本、母母のボトムに異系Hyperion系が1本となっている。これをPhalarisの仔系統Nearco系で考えるとNearco系からの分枝であるNative D.系とNearctic系が2本、類Nearco系のPhalamond⇒Tom Fool系が1本、そしてスタミナ異系のHyperion系が1本となっている。Phalaris系とNearco系の近似と考えると、この母は父サンデーサイレンスと構成が実に似通っていることに気づく。この母を類サンデーサイレンスと言っていいかもしれない。母父マイニングが早熟・短距離の馬ばかりを出した2流種牡馬で、産駒唯一のG1馬(バレリーナH 米ダート1400m)がこの母だったと考えても血統だけ見ると芝の中距離適性があるようには思えない。とすると、日本の古馬3冠を達成するような途方もない能力の馬が出たのには前述の特殊な配合パターンが決まった可能性が高いということになる。意図的に血を濃くして父母の血よりも奥の先祖の血を復活させようという、Northern. D系、Mr. Pro.系の試みは日本でも行われていたのである。この1頭に限れば結果は大成功だったと言えるだろう。スピード、パワー、瞬発力、全てに富み気性も良く2400mまでこなせる。成長力もあり、完成してからの能力は素晴らしかった。が、残念なことに、次の世代にそれらの能力が引き継がれていない。産駒は一瞬の輝きを見せることがあっても、それらが持続することがほとんどない。むしろ、インブリードの弊害による体質の弱さを持つ産駒が多いように感じる。残念。
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ゴールドアリュール
サンデー血統でダービーの頃までは芝を使われていたがたまたまダートを走ったところ大爆発し頂点まで登りつめ、しかも子供もダートで大爆発している。連発型の花火はまだまだ続くだろう。 母は、Northern Dancer 2×4 を持ちとても濃縮されている上に主軸以外の系統もHyperion系で固められた結構危険な血脈である。 強調されたNureyevは短中距離の固定を持ちながらも瞬発力を欠くズブめの血統で、 欧州マイラーの血統であるが日本ではダートで芽が出ることも多々ある。 濃縮されたこの母だからこそこの馬が出たのだろうが、 その後の兄弟を見ても、本馬の蹄や気性になんらかの要素がないと ここまでの成績は残せなかったはずである。 (本来ダート適性の指標となるパワー要素が少ないのだから。) 本馬は特に、逃げ馬の気性、これを持っていたのではないか。 古くはタケシバオーなどが持っていたそれである。 強い産駒は前に行ける能力、すなわちスピードの維持と持続力を持っていることが特徴で、 配合相手にはNas.系によるスピード能力の補充などが求められる。 もちろん、気性がいいことも前提条件となる。 体質の弱さの遺伝は仕方ないが、それでもNorthern D.系のクロスはあまり好ましくない。 3代前血統構成は■Phalaris4(内■Turn-to1、■Northern D.2)、 パワーの異系1、スタミナの異系3。 |
キングカメハメハ
キングカメハメハってのはミスプロ系で、この父の影響が強く出ると マイラー&ダートって感じになり、とてもじゃないけど長距離は走れない。 ただ、遺伝力がいい感じに薄いので母系の特徴を産駒に持たせやすいんじゃないかと思う。 ルーラーシップの得意距離なんてエアグルーヴ(=トニービン)そのものだった。 <血統評価2015> Mr.Prospector系はゼンノロブロイの項参照 中でもKingmamboはその万能性の評価がとても高い。 本質はスピード重視の短中距離を得意としながらもある程度のパワーと柔軟性を持ち、 アメリカのダートから欧州の芝までなんでもこなす。 かつてNorthern Dancerがその万能性を武器に世界を席巻したときのように、 Kingmamboの血が世界を飲み込もうとしている。 Kingmambo系の特徴として、母方の血の良さを強化することが挙げられる。 Native D.系、Nasrullah系、Northern D.系とスピードの根源が詰まったPhalaris仔系統3種と 身体能力と遺伝力の高いRibot系という構成から、 たいていの馬と配合すればPhalaris系の主要系統のクロスにつながりとてもバランスがいい。 主軸がMr. Prospectorだけに高速馬場への適応と瞬発力はサンデー系統に劣るものの、 持続力、パワー、重馬場などを得意としている。 ・ Kingmamboからの分枝のうち、 キングカメハメハはMr. Prospector系のパワーを受け継ぎながらも しなやかな柔軟性とある程度の瞬発力を特徴とし、日本競馬向きの種牡馬であると言える。 母系はNorthern D.系直系の父、賢さ・柔軟性因子の分枝Nijinsky、 さらにNas.系分枝であるMill Reef系を持ちPhalaris系のスピード因子を多く取り入れている。 残念なことに、これだけNorthern D.系の血を重ねても 主軸のMr. Prospectorの色は消せず3000m級の長距離をこなすのは困難だが、 配合相手の血が良ければマイルからクラシックディスタンスまでこなせるようになる。 短中距離特化型のNas.の血が強調された場合はより適応距離が短くなる。 これがKingmamboの良さであり、キングカメハメハもその良さを引き継いでいるのである。 気性が悪い産駒が出にくい。早熟よりで3歳春にピークを迎える。 馬を買う側にはありがたい要素が満載である。 ただ、一見芝馬っぽく見えてもダート馬になる可能性があり、 Phalaris系から外れている零細血統のはずのTourbillonが多少影響しているのかも知れない。 また、Northern D.系が濃くなりやすく体質が虚弱になりやすいのも難点ではある。 3代前血統構成は■Phalaris6本 (うち■Native D.系1本、■Northern D.系3本、■Nas.系2本)、 爆発力の異系1本、零細血統1本。 |
クロフネ
当初はここに書く予定はなかったし、この馬の産駒を買うことも私はないだろう、と思っていた。 体が硬く、体質的にはMatchemの遺伝が出ていてダート向きだが、 スピードに寄っている血統なのでパワーが足りず 雨が降って砂が硬くなるなどの特殊条件でのみ台頭できる種牡馬である、と考えていた。 汎用性は長けるがスペシャリストにはなりえず、特に芝ではサンデー系に勝てない。 Classic Go Goという腑抜けた名前の母父も、私の忌み嫌う臆病血統のFairway系である。 Northen D.系のクロスはあるが母にRoberto系もいて、いかにも動きが鈍重そうなイメージもある。 血統図はこれだけPhalaris内のスピード因子を揃えているので 快速型の牝馬も時々は出てくるが、 それはあくまでイレギュラーである、と私はこの馬を軽く考えていた。 だが、なんだかんだで毎年のようにクロフネ産駒は2~3歳のG1で馬券内に食い込んでくる。 2015年のNHKマイルCでは遂にG1に届いてしまった。 府中のマイルというディープインパクト産駒の庭で、彼らを軽く凌駕する産駒、 しかも牡馬が現れたのである。 これはなぜだろうか。 大跳びで不器用な馬が多いのは紛れも無い事実で、 やや体の柔らかい牝馬に活躍が偏り、さらには広いコースでないと活躍できないのは仕方ない。 母父にサンデー系統が来るのはもちろんのこと、牡馬が活躍するためには さらに母母の血統にMr. Pro.系の軽さの因子が入ることが前提条件のように思える。 軽さを補うことでNas.系のスピードが生きる!と、結論付ければ簡単なのだが、 おそらくはそれは一つの要因でしかないだろう。 このところ数年の府中の馬場、とくに内側ラチの部分を私は注目している。 芝が禿げ上がって土が見えており本来なら反発力が得られないはずなのだが、 なぜかそこを走る馬が伸びている。おそらくは、芝よりもさらに固い土になっているのだろう。 水はけを改良してきた馬場改修の結果である。固く締まった土の上を走るのが得意な馬は誰か。 推測はともかくとして、この産駒は府中で特に強い。ただし、前哨戦大将である。 2歳重賞、あるいは3歳春までは成長力の早さで他の馬に抵抗できるが、 そこから先細りしていく馬が多い。(それでも馬主にとっては十分なのだが。) 牝馬の活躍はNorthern D.系のクロスが活きている結果なのだろうが、 Deputy Minister系とNearctic系のクロスなので強大なクロスとは言えない。 気性は「臆病」という爆弾を抱えている。 繰り返すが、私はあまり好きなタイプではない。 だが、以前の府中のような、 とにかくサンデー系!という馬場が変わってきているのを感じている。 数年前よりも明らかに芝での活躍が増えているこの馬の産駒をみると JRAの馬場改修が味方しているように思えてならない。 ここ数年で活躍する産駒が増えてくるのではないか と予測できるのである。妄想の域だが。 サンデー系で溢れる日本競馬で 将来の繁殖のことを考えてこの産駒を買う、のもいいかもしれない。
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オルフェーヴル
激しい気性と優れた能力が同居する、いかにもステイゴールドの後継といった競走馬だったが 種牡馬としてはどうだろうか。 ノーザンテーストの近親クロスによる雄大な馬格は良いのだろうが、 瞬発力やスピードの因子は異系のパーソロン頼みになるので 馬体の割には、アレレ?という馬が出そうな気がする。 ■Fine Top、■リマンドという2本のスタミナ因子も荒い気性との共存は好ましくは無い。 ともかく瞬発力やスピードを受け継いでいる牝馬との交配を求めるべきだ。 サンデーサイレンスの遺伝力もさすがに薄らいできているし、 多くの後継種牡馬が思ったほど良い成果を上げていない。 産駒の多くには気性の問題があるからで、この馬の仔は特に危険が高いように思えるのだが。
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シンボリクリスエス
Nearco分枝の血統だけで4本、Phalaris分枝で数えると5本。 体の半分以上はPhalarisの血で構成されている。 Royal Charger系のクロスによりスピード、持続力の強化が入っているが やや遠目のクロスであり影響はそれほど強くない。 Nasrullah系のクロスは体の硬さ、短中距離特化、持続力を強調しているが Nas.の中でも味の薄まったBold Ruler系が主軸とあってか それほど強い影響を産駒に与えていないように感じる。 スタミナ系の異系2本が入り本来の得意距離は2400m前後だろうが、 Northern D.の血がないので瞬発力を欠き、決め手はサンデー系に劣る。 母の血で瞬発力の強化を図りたいが、やはりここにNorthern D.系を配合するのが 一番わかりやすいのではないだろうか。Nas.のクロスを活かせば短距離馬も可能ではある。 サンデーサイレンス直仔との配合でHail to Reasonの血を強調することになるが、 今のところはHaloの軽さをRobertoが打ち消してしまう結果になっている。 サンデーの仔系統との配合に期待したい。 流行血統がたくさんひしめいている割には遺伝力がやや弱めで、 「予想外の」馬が出てくることもあるのでなかなか産駒の将来が予想しにくい。 母父の能力にも注目しなければならないやっかいな種牡馬である。 3代前血統構成は■Phalaris5本(うち■Turn-to系+■Royal Chager系で2本、■Nas.系2本)、 パワーの異系2本、スタミナの異系1本。 |
スクリーンヒーロー
一時期は大繁栄を誇ったRoberto系が、シンボリクリスエス程度に後継を託すほど先細る訳がない。 そう期待していた血統家の皆さんが大喜びするであろう、そんな種牡馬が現れた。 日本でマイルを春秋連覇し香港の世界戦でも勝利した年度代表馬モーリス、 有馬記念をRobertoらしい粘りで勝ったゴールドアクターと初年度産駒から大物を出した。 草の上を跳ねるように走るディ…産駒を蹴散らすような掻き込み型の走法、 やはりRobertoの主流はグラスワンダーだったのである。 グラスワンダーはRobertoから引き継いだ粘り強さ、Danzigのスピード、Ribot系の爆発力と 多彩な技能で勝負していた印象で、東京の極限スピード勝負では敵わなくても 器用さを要求される中山や阪神では際どい勝負をモノに出来る、そんなイメージだった。 DanzigとRibot系の組み合わせでデインヒルが出ており、 活躍馬は中距離中心になるだろう。 母母ダイナアクトレス自身は幼駒から素質を買われながらも古馬になって大成、 当時のマイルの日本レコードを更新するなどスピードに秀でていた。 後継の牝馬からグラスワンダーとの配合で障害G1馬マルカラスカルを出しており、 この牝系とグラスワンダーの和合性が推測される。 母側はサンデーサイレンス、ノーザンテーストと ベタな、マイルから中距離近辺を得意にしそうな血統だが 近親にステージチャンプというステイヤーがいることを考えると 母系に眠るTom Fool系やRed God系が父側の特性を引き出していることが推測される。 この奥深さがスクリーンヒーローの強さに繋がっているのだろう。 スクリーンヒーローが東京で勝てたということは、 グラスワンダーの武器に加えて母側のスピードも手に入れたということだろう。 そしてこの遺伝力。これは、とてつもないことだ。 早熟性には一歩劣るものの、古馬になってこれほどの活躍を期待できる種牡馬であれば 日本競馬界の新たな希望になってくれるのは間違いない。 日高の皆様、この系統を大切に育ててください。
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ハービンジャー
距離適性が2000m~2400mと狭いながらも その条件の中で恐ろしい強さを見せた、のがこの馬。 欧州での種牡馬入りが叶わなかったのは諸説あるが デビューが遅かったこと、マイルに適性がないことと 現代競馬の否定につながる不利な特性への危惧があったからだろう。 また、この血統構成も欧州では全く出番のない強いインブリード構成である。 父の主軸のDanzigを始めとして血統の50%がNorthern Dancer系で占められており 瞬発力、柔軟性、早熟性といったその系統の良さを引き出そうという意図が見えるのだが、 圧倒的なスピードは受け継がれたもののこの馬にはそれ以外の良さは出ず 体の固さ、不器用さといった母主軸のNative Dancerの、悪い特徴が出ている気がする。 身体の作りを見る限りもっといろいろな良さがあったはず、なのだが、 怪我がなくたとえ引退を延ばしていたとしてもそれが見られたかどうか。 身体能力を使いこなすためには何より頭脳、賢さが必要で、 インブリードの強いこの馬は賢さになんらかの欠陥をかかえていた可能性が否定できない。 (人間で言うところの発達障害、サヴァン症候群といえるかもしれない) さて、それが仔に遺伝していくかどうか。 Ribot系の爆発力の付加、そしてHyperion、その仔系統のAureole系によるスタミナ補完で 2000m~2400mは身体的には得意分野だろう。あとは賢さ。これに尽きる。 サンデー系牝馬との交配を期待しての輸入ではあるが、 その中でも母系にNorthern D.系を持たない、 なるべく従順な牝馬との仔に期待をしたい。 3代前血統構成は■Phalaris5本(うち■Northern D.系4本)、 爆発力の異系1本、スタミナ系の異系2本。 |
ヴィクトワールピサ
主な勝ち鞍; 皐月賞 有馬記念 ドバイワールドカップ <血統評価2015> 現役時代は先行しての粘りを最も得意としており、その技で世界まで制覇した。 (あれは騎手の手腕が大きかったとは思うが。) Northern D.系のような汎用性のある瞬発力ではなく、ある程度のスピードを持続させて コーナーや坂で相手のスピードが鈍るのを逃さずに差して勝つ、技巧派である。 府中のダラダラ登る坂が合わないのは明白で、中山の急坂向きであった。 母ホワイトウォーターアフェアはフランス中長距離を走り重賞も制した名牝で あのフサイチが輸入した馬である。現在は社台が持っているが。 母父Machiavellianはあまり主張しない、Mr Pro.系にありがちな スピードの付加程度しか効果を出さない補助血統であるが、 血脈にHaloを持ちより鋭敏なスピードと筋肉量の軽さを持ちやすい。 母母系はBustedの血を引く長距離砲で、気性の良さや賢さを引き継いできている。 アサクサデンエン(父シングスピール)、スウィフトカレント(父サンデーサイレンス)と 父親の血脈にHaloのいる産駒が父親寄りの適性でG1で活躍したが この母には、距離やスピードの主張というよりは(もちろんこれらが一級品なのは言うまでもないが) 気性の良さ、賢さの特性が強いのかも知れない。 という母に、気性系に若干難のある父ネオユニヴァースの組み合わせである。 父の項でも述べたとおり強烈な距離固定因子の影響は逃れられないものの、 母の影響も多少はあって気性面ではやや穏やかな産駒に…なってくれるといいのだが。 Northern D.系を持たない血統構成は魅力的で配合相手は山ほどいるだろう。 クラブの初年度産駒を見る限りでは、大柄で成長が遅い傾向があり繋ぎも立ち気味に見える。 Machiavellian系の軽さというよりはネオユニ⇒エタン系の影響を強く受けている印象だが いや、まだわからない。 Northern D.系、特にアサクサデンエンのようにSadlar's Wells系の芝の重めの血統との組み合わせなら スピード豊富な芝2000m付近のスペシャリストが誕生するかもしれない。 血統的には兄のスウィフトカレントのほうが良かったな などというのは愚かだろうか。 結局は勝った馬が偉いのである。
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ワークフォース
主な勝ち鞍; 英ダービー 凱旋門賞 <血統評価2015> Mr.Prospector系はゼンノロブロイの項参照 Kingmambo系はキングカメハメハの項参照 父Kingmanbo、母父Sadler's Wellsといえばエルコンドルパサーで、 当馬もエルコンに似て欧州の2400mで活躍した。 エルコンドルパサーは母母系にNas.系のスピード血統を持ち Special、Lisadellの牝馬&全姉妹クロスでスピードを強化していたのに対し、 当馬の母母系はRibot系、Herbager系と晩成スタミナ系に寄っている。 エルコンドルパサーの芝の代表産駒が菊花賞を制したソングオブウインドであることを考えても、 あの血統ですら日本芝では長距離向きになってしまうのである。 Kingmanboの遺伝の薄さとSadler's Wellsの遺伝の濃さが推測できる。 母母側にも長距離因子となると、芝5000mくらい無いと真の持ち味が発揮されないのではないか。 北海道の夏2600mシリーズが適鞍で、中央4場では常に雨待ちという状態になりそう。 Ribot系の血が濃いので馬格には恵まれそうだ。 本馬の日本芝への適性が不明なことに追加して、 Kingmanbo系種牡馬に大人気ダービー馬エイシンフラッシュが加わることも 本馬の人気をさらに下げていくことだろう。数年以内に見かけなくなるかもしれない。 3代前血統構成は■Phalaris5本 (うち■Native D.系1本、■Northern D.系2本、■Nas.系1本、■Turn-to系1本)、 スタミナ系の異系1本、爆発力の異系2本。 |
ルーラーシップ
主な勝ち鞍; クイーンエリザベスC <血統評価2015> 出遅れ出遅れ&出遅れで結局まともに走った回数のほうが少なかったんじゃないかと思われるが、 必ず最後は突っ込んで馬券になった、愛すべき キングカメハメハの真面目さはそこには存在せず、 Phalaris系的な役割のスピード付加程度に留まっている。(Mr. Pro系にはよく見られる現象である) 本馬にはトニービンが強く影響していたと考えて良いのではないか。 ちょっとオツムがアレなのはトニービンの遺伝と考えるなら 馬格と底力、スピード維持能力も遺伝しているはずである。 母は牝馬にしては珍しい中長距離型の一流馬で トニービンのHyperion系と母母系のTouchstone系(Hyperion系の祖)とのクロスの恩恵もあるようだ。 仔系統ではないサンデー肌の牝馬でNorthern D.系の血が薄い馬が繁殖相手にベストだろう。 Northern. D系のクロスの濃さで暴れ馬になってしまうのはご勘弁願いたいが、 Nas.系の強化によるトニービン譲りの ルーラーシップの母母ダイナカールの血統は Northern Dancer系の中でもやや瞬発力寄りのノーザンテースト、 それにスタミナ系HimyarやHyperionの元系統Touchstoreの掛け合わせである。 このダイナカールの血統図はハーツクライの母母ビューパーダンスに似ており (Lyphard×Himyar、上のほうのハーツクライの項を参照) 同じ父トニービンなのだからエアグルーヴとアイリッシュダンスも似た特徴を持つと考えて良いだろう。 (細かいことを言えばアイリッシュダンスのほうが瞬発力、パワーともに際立っているように思えるのだが、 エアグルーヴのほうがはるかに活躍したのはやはり零細血統の緩衝が大事だ、ということなのだろう。) ともかく、この系統はクラシックの距離を一番得意としており 広いコースで伸び伸び走るのが得意、裏を返せば小細工が苦手で成績が安定しないということが言える。
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ロードカナロア
主な勝ち鞍; スプリンターズS(2回) 香港スプリント(2回) 高松宮記念 安田記念 <血統評価> ロード冠で募集価格2500万(一口5万円)の馬が10億円近くも賞金を稼ぐ、 とんでもない夢物語を実現したのがこの馬である。 母父Storm Catの血を色濃く受け継いだその短距離型の馬体もさることながら、 母側に眠る極限スピード型のIn Reality、それを賦活する爆発力・持続力のHis Majestyと 体調面・気性面ともにミドル~ハイペースで鬼のように強いことが血統からも裏付けされる。 血にサンデーどころか3世代前にTurn-to系すら含まないので 短距離志向ならカナロア、中長距離志向なら上記ルーラーと 今後のサンデー系牝馬の配合相手の柱になれることは間違いないだろう。 問題があるとすればそのスピードの支えになっている零細血統In Reality系で、 配合相手とクロスがあるようだとやや体を固くしてしまうかもしれない。 父父キングカメハメハ側のTourbillon系もそうだが、In Reality系のほうがさらにリスクは高そう。 距離は伸びそうも無いのでそこは割り切って短距離馬と期待するにしても、 芝すらダメ、となってしまうのはいただけないので産駒を検討する際には In Realityのクロスと脚元には注意を払いたいところ。
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エイシンフラッシュ
主な勝ち鞍; 日本ダービー 天皇賞(秋) <血統評価> 黒光りする雄大な馬体。纏う王者のオーラ。 あまりのかっこ良さに振り向いただけで失神する女性ファンまで出た、 というのはさすがに作り話だろうが、フラッシュ様は平民の羨望を受けてタフに走り続けた。 ダービーのあとに2年半勝てず、それでも信じ続けた下民にくれた天皇賞(秋)の最高の施し。 天皇陛下の前でデムーロ敬礼、他の馬とはもう役者が違いすぎた。 冷静に振り返れば、父キングスベストと母側Kris⇒エタンから受け継いだ Native D.系を象徴するその筋肉の鎧こそがこの馬の鈍重さの元凶だったし、 HamptonやDonatello、Blandfordといった切れ味に乏しい、 ちょっとしか使えない末脚というステイヤー気質も 産駒にも恐らくは付いてまわるだろう。 活躍の場がかなり限られる種牡馬になるのではないかと思うが、 そこは現役時代にこちらの思惑を「騙し続けた」エイシンフラッシュなので、 血統の奥に眠るRed God系のように変幻自在な遺伝性を我々に見せつけて欲しい。 案外、Nas.系やN. D.系の軽い牝馬との和合性はあるのではと考えている。 主流血統のクロスを受けずにここまで生き延びたSurumuの血統を生かしたいが、 スピード豊かなAcatenangoよりも格が落ちるプラティニなのが惜しい。
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ノヴェリスト
ダイワスカーレット、ダンスインザムード、エリンコート、ピースオブワールド、 カレンチャン、レッドディザイヤ、サンテミリオン、リトルアマポーラ、マルセリーナ。 「なんでもかんでもG1獲った牝馬なら付けておこう」という種牡馬で、 社台の担当者は気が触れてしまったのではないかと疑うような牝馬のラインナップである。 それくらい、この血統を残すことに必死なのだろう。確かに、初年度でスピード不足が露呈すれば その後は見向きもされなくなるような重い重い欧州血統である。 スタミナ系統が4本に対してスピード因子は3本で、しかもスピード因子もNijinskyやらCaroやらといった 重く固い遺伝なのでこれは相当にスピードの遺伝力が強くないと厳しい。 しかし、軽い瞬発力勝負=スローペース症候群に陥った日本競馬を救うには これくらいのカンフル剤が必要なのだと、大馬主社台様は仰っているのである。 このままでは世界に勝てない。ディープなんとかとかオルなんとかでは勝てないのである。 ノヴェリスト自身のキングジョージ走破タイム2:24.60はかつてのハービンジャーを超えているし、 この馬自身がスピード活性を抱えているのは紛れもない事実なのである。 (それがどこから来ているものなのか、4代血統表では説明できないのが悔しいが) それをうまく伝えられるか。伝えて欲しい。 かつてのメジロマックイーンも後世で成功したのだ。この血統にもチャンスはある。 市場の評価はまだ低い。 安く買えるうちに狙っておくのが長距離ファンの馬主の正しい楽しみ方だろう。 〈2017追記〉 2歳新馬戦初週でいきなり勝利。牝系がソニンクの快速血統だと言っても この仕上がりとスピードは全く予測できなかった。 改めて血統を見直すと、ノヴェリストの4代母NubiaがNecker×Naxosの全血クロスを持ち さらにその娘Nerolaも父側からNaxos/3を引き継いでいる。 主流血統を含まないMonsunとの掛け合わせでNaxosの牝馬クロスが際立っている可能性は無いか。 Naxosはドイツオークスを勝っており牝系はF4-r、スピード活性の強い牝系である。 現役時代の活躍とスピードから考えても、Monsunの重厚さではなく こちらの牝系クロスが主軸になっていると考えていいのだろうか。 とするとスピード豊かな短中距離馬を期待しても良さそうな気がする。
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タートルボウル
「育成選手ではなく大リーガーを連れてきた」と評された輸入馬だが、 ここから大物が出ることを果たして社台が想定しているのだろうか。 父はあまり馴染みのないNight Shift系で、短距離優位の遺伝とくれば ■Northern D.の■Storm Catと同系統だろうか。 Night Shift自身は■Teddyの血を取り込んでおりこれはStorm Birdと共通する特徴である。 そこにPhalaris系ながら傍流の■Habitat、■Top Villeでスピード強化を図っているものの ■Storm Catにおける■Secretariatのようにガツンと主張する血統がない。 逆に配合相手側の主張を生かす血になりそうなのだが、 そうなると「コレ!」という馬が生まれにくい血統になりそうな気もする… ともかく、スピードに優れるHabitatのクロスを求めた配合ならある程度の馬は期待できそうか。 Turn-toの血を持たずサンデー系牝馬との配合がこれから何度も試されるに違いない。 が、DDKは実はサンデー系との配合を期待していない。 サンデー系に頼るようでは(=サンデー系に向けた固い馬場から脱却できないようでは) いつまでたっても欧州競馬を超えられない!と、本気で考えているからである。 いくらか日本的な味付けを含んだ■Northern D.こそが欧州競馬に挑戦するに相応しい。 それがこの種牡馬かどうかはわからないが、少なくとも■Northen D.主体の強い種牡馬を探す、 あるいは作るといった馬産地の努力をこれからも期待したいのである。
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へニーヒューズ
現役時代はアメリカで走り、ダート・短距離・早熟というとてもわかりやすい馬だった。 種牡馬になってから、日本に輸入された産駒のほとんどが勝ち上がり 中から朝日杯FSを制したアジアエクスプレスが出現するなど猛威を見せつけたために 本馬自身が輸入されるに至ったわけである。 本馬の父ヘネシーもダート短距離馬との評判だったが、その仔ヨハネスブルグの産駒は意外にも芝をこなし、 しかも距離もマイルくらいまでならこなす汎用性の高い競走馬が多かった。 恐らくはサンデーサイレンス系との相性が良くスピード活性が高いのではないかと推測される。 その■Storm Catの後継として本馬が輸入され、今後が期待されているわけだ。 血統図を見ても、■Turn-toを含まずにPhalaris内のスピード因子6本を揃えているのは脅威で さらに先行力の高い■Nas.とパワーのある■Native D.を含んでいる。 サンデー系をつけて芽の出なかった繁殖牝馬や、あるいはサンデー系そのものの牝馬に 新たな可能性を与える種牡馬になると思われる。 もちろん、1勝を渇望する、芽の出ない馬主の方にも救世主となるだろう。 ただ、アジアエクスプレスは結局ダート馬になり、しかも早枯れの様相を呈している。 成長力を母側で補う必要があるのが課題だろう。
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ダノンシャンティ
主な勝ち鞍; NHKマイルC <血統評価2015> フジキセキの血がIntent系の影響で短距離向きになるであろうことは キンシャサノキセキの項で説明したとおりである。 母父が影響力の低いDarshaan=Mill Reef系であればなおさら、 得意距離はマイルまでに限定されるだろう。距離の融通は望めない。 Haloのクロスがあり、本馬のスピードの限界値の高さの根源となっているのだろうが、 同時に脆弱性もきっちりと遺伝させてしまっている。 同父のキンシャサノキセキよりは仕上がりが早くなる可能性はあるが、 爆発性や融通性はあまり期待できないのではないか。 馬体の見栄えはいいようなので、 Haloの脚元の弱さが遺伝していないことを祈る。 3代前血統構成
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ディープブリランテ
主な勝ち鞍; 東京優駿 <概要> 3代母のバブルプロスペクターは懐かしき菊花賞馬ザッツザプレンティを出している 母母父バブルドリームはAkaradでバステッドの子供。つまり、良く練られた配合で ブリランテ自身は母と父から受け継いでバステッドの血を強調されているわけです 切れ味は今一歩かも知れませんが前目で粘れれば京都3000mはかなり向く舞台 <血統評価2015> 日本の主流後継馬1号、欧州スタミナ血統とディープの組み合わせである。 荒れ狂う気性は兄弟全てで出ており、今にして思えばダービーでは「たまたま嵌った」、 これぞ岩田乗りといえる騎乗であり同配合の弟もそこまで強さを感じない。 スピードとともに腱の脆さも併せ持ち、4歳まで活躍できた兄弟のほうが少ない。 気性ともども、余分な零細系が入らない洗練された血統が原因だろうか。 Phalaris系、なかでもNorthern Dancerの直接クロス(5×5)と仔のLyphardのクロス(4×5)が かなり主張しており、気性面と体質に影響しているのは間違いだろう。 Blandford系Bustedのクロスで長距離因子も強調されているがそれを生かしきれる気性かどうか。 ただ、それらの欠点はこの馬自身のものであり、 牡馬が遺伝させやすいと言われるスピードと馬格はどちらも優秀である。 気性は母側に補ってもらえばよい。雑務など相手に任せておけばいいのだ。 ディープインパクトの産駒は明らかに牡<牝で活躍が偏っている。 ディープブリランテはどうだろか。 この馬格がうまく遺伝した上でNorthern D.系の血の薄い母がうまく気性を整えてくれれば 牡馬の活躍も期待でき、父越えもあっさり達成されそうな予感もある。 4種のPhalaris仔系統が揃う和合性が高そうな血統構成も魅力的だ。 産駒が比較的安いうちがチャンスかもしれない。 3代前血統構成
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トーセンホマレボシ
<血統評価> トーセンホマレボシの所属するクラフティワイフ牝系は融通の利く血統である。 スタミナの勝負では同じ父のブリランテに劣る。 それはTeddy系のクロスが証明している。 ブリランテよりもスピードに寄っている血統ではあるので マイル近辺、芝ダートどちらでも、といった感じになりそうだが、 かなり頑張らないと簡単に淘汰されてしまうような予感もする。 3代前血統構成
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ジャスタウェイ
父に長距離砲、母にHampton系75%とこれはどう見たって鈍重になりそうなのだが なぜかマイルの高速決着に強い馬が出た。 本来なら大した影響力を出さないWild Againの血か、奥底に潜んでいるOwen Tudorか。 とにかくサンデーが入っているにもかかわらず非主流の血の影響が強いため 産駒は優劣の幅が大きくなりそうな予感がする。 同牝系からは芝の活躍馬にアストンマーチャン、ダートにシビルウォーなど中堅クラスといったところだが この母から活躍馬がいないところを見るとやはりGrey Sovereignの刺激が大事なのか。 Owen Tudorの暴走系スピードをGrey Sovereignのスタミナで強化していると仮定すると、 同じくOwen Tudor、あるいはAllegedなどスピード傾向の強い零細血と相性がいいかもしれない。
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ネオユニヴァース
主な勝ち鞍; 皐月賞 東京優駿 <概要> その母ポインテッドパスからさかのぼると出てくるのは快速マイラーばかり。 ネオユニヴァース自身が長距離でいまいち君だったように、 この馬は距離の限界があって中距離までしか走れない。 エタン=ネイティヴダンサーの血は本質的にマイラーで、 オーバーした距離を根性で挽回するようなイメージなので長距離は向かない。 と、思うので、この馬は残念だけど菊花賞向きではない。 <血統評価2015> サンデーサイレンスはディープインパクトの項参照 3代前にPhalaris系2、パワーの異系1、スタミナの異系1。 母系の主軸であるKrisはNative Dancer系の中でも亜流のエタン系で、 その系統を代表するOh So Sharpはセントレジャーまで勝っているものの その本質はクラシック距離までがギリギリのマイラー血統である。 Nearco系を経由した血統に比べ明らかに緩急変化のつけ方が下手。 ある程度のスピードを持続させる競馬が得意だがミスプロよりは柔軟性や瞬発力を欠く。 したがって先行型の脚質になりやすく、またダートは得意に出る可能性がある。 類似PhalarisのTeddy系がクロスしておりパワーの遺伝力は持っているのだろうが、 Phalarisそのものの血からするとスピードはやはり劣ってしまうように感じる。 St. Simonから分枝するPrince Rose系は気性難とともにスタミナを若干補完している。 Fairway系はPhalaris系の分枝の中でも主張しない血統。 <血統構成>
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ステイゴールド
気性の激しさを内包した末脚。ともかくブチキレて追い込んでくる狂気の馬。 母父ディクタスが狂気のもとであり、ファイントップにつながる長距離血統のくせに ディクタス自身が短中距離を得意としたのは気性が激しすぎたせいだろう。 このへんは産駒にも現れており、サッカーボーイがいい例。 産駒にヒシミラクルなどの追い込み系の長距離馬を出している。 このサッカーボーイの全妹がゴールデンサッシュで、サンデーとの駆けあわせで 追い込み一手のステイゴールドを生み出した。こちらも3代前にノーザンテーストが含まれており、 ディープと同じくその血を重ねてスピードを生かすことができる。 母のボトムラインはプリンスリーギフト系で、トウショウボーイやサクラユタカオーの父である テスコボーイが有名だが、この血統は中距離以下でスタミナとスピードを発揮できる血統である。 長距離も十分カバーできるが、完全なステイヤーかと言われるとそうでもない。 スタミナとスピードの両方が要求される、ペースの締まったタフな中距離戦でこそ この血統の真価が発揮されると予測できるだろう。 <血統評価2015> サンデーサイレンスはディープインパクトの項参照 3代前にPhalaris系2本、パワーの異系1本、スタミナの異系1本。 母の父ディクタスはスタミナ系の異系Fine Top+気性難系の異系St. Simonの配合で、 その両方を受け継いでしまった。母母系に柔軟性のノーザンテーストが入ってはいるが、 もう一方のPrincely Gift系はPhalaris系の中でも 特に気性難+中距離特化の傾向の強いNasrullah系からの分枝なので、 この遺伝子が長距離を走るためには気性難の克服と柔軟性の補完が必須だろう。 <血統構成>
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スペシャルウィーク
サンデーサイレンスはディープインパクトの項参照 3代前にPhalaris系2本、パワーの異系1本、スタミナの異系1本。 母の主軸はNorthern Dancerの系統のNijinsky、母母の血にスタミナの異系と ぱっと見て色合いはディープインパクトに類似している。 あとの2本はNearcoを経由しないPhalarisの系統であるTom Fool系と 日本が繋いできたといってもいいヒンドスタン=Bois Roussel系である。 Nijinsky系は柔軟性のあるNorthern Dancerの中でも特に長距離を得意とし、 その強さはスタミナ、瞬発力とともに賢さの遺伝にあると言われている。 Tom Fool系はPhalarisのスピード血統とはいってもNearcoからの分枝血統に対して スピードの遺伝力は少し弱いが、その分気性はやや穏やかになっている。 Hyperionとその仔系統Aureole系のクロスはスタミナを強調する。 Bois Roussel系は数十年前に日本で一時代を築いた血統で スタミナの遺伝力が高く、St. Simon系の気性の荒さは軽減している。 全体にスタミナ寄りの配合だが、母父のNijinsky系の瞬発力と従順さで 中距離までカバーできるステイヤーというのがこの馬の正しい評価かもしれない。 遂にキャロットクラブからカタログ落ち。 この産駒にはもう会えないのだろうか。 3代前血統構成は■Phalaris4本(うち■Turn-to系1本、■Northern D.系1本)、 パワーの異系1本、スタミナの異系3本。 |
マンハッタンカフェ
母の主軸となるRibot系はSt. Simon系から分枝した異系で気性難はやや薄らいでいるものの、極端な競馬を好む傾向がある。伝統的な「大物喰い」の血統で突然覚醒したかのような強さを見せることがある。スピードなどの潜在能力と遺伝力は相当高いものの、St. Simon系についてまわる気性難で体を上手く使える産駒と使えない産駒が出てしまうのだろう。まあ、イタリアの血統だから仕方ない。お国柄だ。成長はやや遅め。Ribot系をこういった特徴を踏まえて「爆発力の異系」としたい。他方のBold Ruler系はNasrullah系からの分枝で気性難とスピードの持続力を遺伝させる。気性難のためその配分に苦慮する産駒が多く得意距離は必ずしも長距離とは限らず、最初からアクセル全開で走るためにスタミナ系の短距離馬も出る。Owen Tudor系はスタミナ異系Hyperionの仔系統にもかかわらずマイラーが多いことからも「短中距離をスタミナで押し切る」競馬が得意なことも納得できる。ボトムラインのEclipse系はそれほど主張のない淡白な零細血統である。流行血統を多数持つ、スピード因子の多い牝馬となら大物が期待できるかもしれないが平均的な活躍を期待するのは難しいと思われる。どれだけ賢いか、能力の使い方が上手いかで産駒の将来が決まりそうである。2016年産が最終産駒。
<クロス因子> ■Alleged=●Prince John/2 ↓…3/4…↑ ▲Quill、Milan Mill、Neriad ▲Suleika=▲Sheherazade、▲Sabrina (●Gulf S.-●Heliは当馬内で使用済み) |
キンシャサノキセキ
サンデーサイレンスはディープインパクトの項参照 3代前にPhalaris系2、パワーの異系1、スタミナの異系1。 その息子フジキセキは早熟さが売りで その仔のほとんどは短中距離が適性距離である。 万能性の高いサンデーサイレンスの血を短中距離に縛り付けたのは母に流れるIntent系だろう。 Intent系は早熟・成長力を持ちながらさまざまな「スペシャリスト」を出す特殊な零細血統で その系統であるウォーニングが日本で種牡馬生活を送り、 カルストンライトオ、サニングデールという 芝の名スプリンターを輩出したことが裏づけである。 始祖からちがう完全な異系のIntent系の特徴として前脚で地面を掻きこむように走る 前輪駆動の走りがあり、芝なら短距離、ダートなら中距離までといった 距離固定がされてしまうのが特徴である。 さらにSt. Simon系の気性難も距離融通性を削いでしまっている。 クラシックで活躍できた産駒は少なく、活躍馬のほとんどが 「あのフジキセキからこんな馬が!」のタイプであったが、 それは、あまり主流血統を持たないフジキセキの血を母方の主流血統が飲み込んだ結果である。 フジキセキ自身がそれほど強い遺伝力があるわけではないので、 仔の能力は母にも影響を受けるといえる。 ・ 母の主軸となるRibot系はマンハッタンカフェの項で説明したとおり 大レースに強い爆発力のある血統で、体の頑強さも伝える。 Himyar系はこのTouchstoneファミリーに珍しいパワー血統である。 母父の血統は晩成よりで、父の血とは逆の性質を持つ。 母母系のLyphardは柔軟性と瞬発力、早熟性の要素も持っている。 Tourbillonはダート適性を与える可能性がある、が、 母母系からの孫のデインドリームが芝の2400mで大暴れしたことを考えても、 この母母の血は純粋なスピードと瞬発力という強い武器のみを遺伝させているのだろう。 キンシャサノキセキ自身の成長力と爆発力は母父Ribot系から、 スピードは父父系と母母系から、短距離の縛りは父母系から、と どの系統からも影響を受けているのが特徴的である。 この遺伝がうまい方向に引き継がれれば、 早いうちから成長し、さらになかなか衰えず、体の頑強さもある仔が期待できるのではないか。 短距離の適性は仕方ないだろう。Northern D.系をクロスさせれば少しは違うかもしれない。 主流血統のうち特に気性の難しいNas.系と体の固いNative D.系がいないのは幸いで、 どんな馬と併せても気性の問題はあまりない、かもしれない。 あとは、この馬の遺伝力がどれほどのものか。 主要血統が少ない分、スピードの遺伝は弱いと推測せざるを得ないが もしスピードの遺伝が十分なら種牡馬としては使いやすい部類なので 大繁栄の可能性も、もしかしたら?ある。 3代前血統構成は■Phalaris2(内■Turn-to系1、■Northern D.系1)、 パワーの異系2、気性難系の異系1、爆発力の異系1、零細血統2。 |
1-1 種牡馬主要系統短評 |
1-2 種牡馬考察(クラブ馬の父馬のみ) |